視覚障碍をもって生きる
☆盲学校教師の凄い人生.
以下に 書籍「視覚障碍をもって生きる」の写真を添付します。
表紙には この他、イラストで 青い羽根が1つ描かれています」
本書は、20代後半で失明した著者 栗川 治氏が、体験を通じて会得した自らの哲学と、政治における福祉の歴史、並びに 今後の展望について述べている書籍である。
著者は 幼少の時から 失明の不安の中で生きていた。
それは 父親が視力を 失っていたし、その子息である著者 及び 弟が同様の視力低下のプロセスを経たからである。
病名は網膜色素変性症(もうまくしきそへんせしょう)。
彼は高校の教師となるが失明し、その後 盲学校の教師となる。
○失明まで.
父が視力を失い、自らも障がいが生じた小学生時代は 視力は0.2であり、暗くなると ほとんど見えなくなっていた。
また、視野は極端に狭く、譬えるなら 細い管を通して見ている状態であり、足元が見えず つまずき、野球などでは すぐにボールが視界から消えるなど 不便していた。
この症状は、失明した過去の父と同じであった。
子供ながらに 著者は 将来に対する不安をいつも抱いていた。
父親は失明後 40歳の後半から 再起のため鍼灸マッサージ師の勉強を開始した。
著者は 視力障がいを持ちながら 大学に進学、やがて高校の教師となった。
弟は兄より視力の低下が早く、父と同じく鍼灸マッサージ師の勉強を始めた。
著者の視力は年々悪化し、電柱にぶつかったり、道の側溝に落ちることなどが増え、やがて生徒のテストの答案が見えなくなる。
ついに視力のほとんどを喪失し、筆者は 盲学校の教師となった。
○盲の世界の認識.
著者の盲の世界の認識とは、いかなるものであろうか。
以下に、著者の認識を本文より抜粋する。
「盲学校の快適さは 裏返せば、一歩外に出れば 配慮も支援もない過酷な世界である。
障がい者のいない一般社会があり、そこに排除された障がい者が集められ、特殊な学校や施設に収容される。これは障がい者に対するアパルトヘイト(南アフリカにおける人民隔離政策)ではないか。
これまでは障がい者はいないとされてきた一般社会の中に、わが身を入れて、障がい者がいるのが当たり前で、しかも そこで快適に生きていけるように したいと願った」
○著者の哲学的思考.
彼は失われゆく視力の中で、「障がいとは何か」ということを思索する。
そして気付く。
「これまでは目の病気など 体や心の医学的問題、そして見えない、できないという個人の能力の問題が障がいと考えられてきた。
しかし、個人の心身や能力の不全は、程度や種類の差こそあれ、誰にもある問題だ。
その中で 障がいを感じるのは、日常生活や活動において支障があったり、困難があったりするからだ。実は、生活や活動のバリアこそが障がいの本質で、そのバリアを取り除けば 障がいは 障がいでなくなる」
著者は、このことについてエレベーターの譬えで語っている。
「人の足が動かず階段を昇れないとする。この個人の病気を治せとか、訓練して昇れるようになれとかいうよりも、エレベーターがないというバリアを認識し、その条件を整えることの方が建設的だ」
「障がいに対する偏見と劣等感の呪縛を、取り除く社会を作るべきだ」
著者はこの自らの信念によって歩み始める。
○それからの歩み.
著者の父はやがて 鍼灸マッサージ師の資格を習得、50代、60代に充実した職業人として再起した。70歳で定年後も、デイケアーのボランティアで活躍した。
その後、73歳で没している。
筆者においては、旺盛なる挑戦心で教師として、また ボランティアなど多彩な活躍をし、視覚障がい者を支え 現在 50歳を超えた。
前著では「異彩はバリアフリー(視覚障害教師が「障害」を問う)」を出版。
このほど2012年に本書「視覚障碍をもって生きる」を出版した。
本書は393ページの大著である。
本書の執筆には、音声訳ボランティア「水声会」の協力があった。
まさに支え 支えられ 苦闘を乗り越えた勝利者の本である。
彼は 自らの信念を終始 訴えている。「できることは自分でやるんだよ。でも、できないことは手伝ってもらう。遠慮はいらない」と。
○所感.
この栗川氏の家族の逞しさ 気丈さに終始驚きつつ読んだ。
両親も弟も含め、まるで不死鳥のようだ。
障がいをエンジンに変えて、周囲を圧倒する偉大な家族だ。
彼の人生は、まさに仏教で説くところの願兼於業(がんけんおごう)そのものである。
著者は、本書の後半部に、政治分野における障がい者の 社会参加に関する持論として、「私たち抜きに 私たちのことを決めるな!」(Nothing about us, without us!)との文言を再三 書き示し、福祉や制度のルール策定に 当事者不在の「決めてあげる」という旧来からの晴眼者理論に異議を唱えている。
そして、審議会などに、視覚障がい、聴覚障がい、身体障がいの力ある人たちが参加し、福祉の建設を推し進めるべきと訴える。
思ったことは、著者が 自らの個性を最大限に生かし、価値を創造し続けていることである。障がいとは けしてマイナスに固定されたものではなく、プラスに転じていけるということ。このことは、あらゆる分野に同様に言えることである。
尚、彼は音楽を楽しみ、マラソンも楽しむ人である。
一切を挑戦の中に置き、人生を味わい尽くさんとしているかのようだ。
新潟第九合唱団メンバーにして、ベートーベンの歓喜の歌を歌い、朝、仕事前にボランティアに伴走されながら10㎞のジョギングを日課とし、ハーフマラソンをも完走する体力を有する。快食にして快眠、健康で 頭脳明晰の人である。
私は本書読み終え、私自身の中の視覚障がいに対するバリアが完全に消失していることに気付いた。そして、障がい者の人たちが中心となって 福祉社会を作ることが大事であることを学んだ。本を閉じ、私はつぶやいた。
「目が見えないことは 不幸なる烙印の運命ではない。むしろ 目が見えないことでしか 果たせない使命がある」と。
学ぶことの多い 価値ある本でした。
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by sokanomori3
| 2014-03-10 21:41
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