人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ひとたびはポプラに臥す 2


☆途方もなく大きな国の旅.

以下に、書籍「ひとたびはポプラに臥す2」の表紙写真を添付します。
ひとたびはポプラに臥す 2_b0312424_22143075.jpg

昨年、ひとたびはポプラに臥す1を読みました。
ポプラに臥す1の感想文は、→ここをクリック!
1巻を読んだ感想は、以下のごときものでした。
「日本には貧困は存在しないのではないか。私たちは本当の苦悩を知らないのではないか。だから、本当の幸せも感じられないのではないか。もしかすると、私はこの世の中のことを何も知らないのではないか」‥
心を真っ白にさせられたというのが正直な感想です。

○プロフェッショナル.

宮本輝(みやもとてる)という作家のチカラは図抜けていると思います。
読み始めるとスーッと本の中の世界に吸い込まれ、その世界に完全に入ってしまい、通勤電車のガタゴト音が聞こえず、アナウンスの声も聞こえず、気付くと駅を乗り過ごしてしまう‥という具合なのです。
プロですね。作家の文章力というのは半端ない。(^^)
実は、この2巻を昨年読み、また、年明けに2度目を読んだのです。
結果、昨年も年明けも、朝の通勤電車を乗り過ごしてしまいました。会社に2度も遅刻するという代償を払いました。

○2巻のあらすじ.

この2巻に描かれる旅は、ゴビ砂漠を西へと進み、酒泉から西安、敦煌を経て、ウイグル自治区へと渡ります。
もともと、私自身、鳩摩羅什(くまらじゅう)に憧れを持っていたからこそ、この本を読む気持ちになったのです。
「羅什とはいかなる人か。宮本輝は必ず鮮烈な答えを与えてくれるだろう」
そんな期待から読み始めたのですが、作者は中国という途方もない大きな国を延々と語るのみ。やがて敦煌の話になりましたが、宮本輝は莫高窟をさらりと記述し終えます。
羅什が生き、羅什が見たであろう時代の第272窟と第275窟、さらに285窟を見学した宮本輝は、次のように記述するのです。
「窟のなかで見たものを、私はよく覚えていません。私はどういうわけか、そのようなものに心を動かされることがないのです」
彼は羅什に成り代わり、莫高窟の壁画を語ります。
「仏教が広まることは結構だが、私のひろめたい仏教はこのようなものではない。象徴的な架空の世界にもそれなりの意味はあるだろうが、架空は架空だ。俺はそんなものは15、6歳で卒業した。俺が伝えたいのは実相であって、浅い方便の教えではない」
命をかけて法華経を訳した鳩摩羅什はそのように考えていたというのです。
途方もない国土の生老病死の苦悩を解決するために、仏教の神髄たる法華経に心血を注いだのであるから、美術的なものに深い情熱を持ったとは考えにくい‥
私は、「なるほど、宮本輝の言う通りだ」と思いました。

この莫高窟の淡白な記述とは裏腹に、宮本輝は広大無比なシルクロードの砂嵐や熱さ、渇きや疲労などを書きつづるのです。
私は読みながら、熱砂を肌で感じ、喉に渇きを覚え、のめり込みました。
そして、ついに新疆ウイグル自治区に到達しました。そこから猛烈な砂嵐と竜巻の中をさらに西へ進み、火焰山(かえんざん)のふもとにたどり着きます。
「地図に描かれていた湖が干上がっている。涸れたんですね‥」
「何もないな。空もない。ただ天があるだけだ」
気温は50度となり、クルマが故障したら全員がミイラになるという激烈な大地の真っ只中で、宮本輝は次のように語るのです。
「山が、わずかの風もさえぎって、地表の温度は70度を超えていそうで、まさに煮え立つ地獄の窯の底といったところである。ミネラルウォーターが完全に湯になっていた。42、3度ありそうだ」
この地獄のような道を通って仏典は渡ったのですね。

○所感.

ひとたびはポプラに臥す2は、まだ、旅の始まりに過ぎません。
「宮本輝は何を伝えようとしているのだろう」と考えながら読みました。「読者を圧倒し、固定概念を捨てさせる意図をもって2を書いたのではないか」と思いました。
第2巻の冒頭で、宮本輝は述べています。
「日本は小さいので、それは仕方ないのであろうが、国土が小さいゆえの利権もあれば、(中国のように)それが大きすぎるゆえの利権のおそまつさというものもある」と。
日本は小さい。小さいがゆえの良いところがある。中国は大きすぎるがゆえの問題がある、というのです。
私はずっと、「日本は資源のない小さな国」と思っていました。しかし、小さいゆえに良いことがあるという著者の言葉に嬉しくなりました。
けれど、そんな日本人としての私の気持ちも、第2巻を読み終えるころにはすっかり消えていました。最後は、私自身が日本人だったか、中国人だったか、あるいはインド人だったかも分からなくなり、すっかり宮本輝と一緒に旅をしていたのです。
次の記事は、→ここをクリック!

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ
ブログトップへ
by sokanomori3 | 2015-01-15 22:40 | 一般書籍のご案内 | Comments(2)
Commented by 10n5 at 2015-01-24 00:19 x
この記事の感想文に感動しました。広大な砂漠の熱気が伝わってきて、久遠の昔から沢山の人々を介して伝来された法華経が、その過程も含めて命なんだと、輝いているように感じました。この小説がとっても読みたくなりました!
Commented by sokanomori3 at 2015-01-24 07:57
10n5さん、おはようございます。
この本はいいですよ。おそらく、何度読んでもおもしろい本です。
私は感想文を書きながら読んでいるので、まだ3巻までしか読んでおりません。じっくり味わいたいという気持ちもあるのですが、仕事の忙しさもあるのです。
本当は、長期の休みをとり、ゆっくり堪能したいぐらいの魅力ある内容です。
でも、結論がどうか。納得の答えを用意してくれるのか‥
楽しみでもあり、不安でもあります。(^^)
★菊川広幸


創価の森通信Freedom   音声ソフト対応BLOG


by sokanomori3

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

外部リンク

検索

カテゴリ

全体
ブログ案内
ひらがな御書
ひらがな御書の集い
ひらがな御書に学ぶ
自在会情報
自在の人
妙音・自由の人
前略 千早さま
千早抄 (体験談)
千早美術館
日本点字図書館見学記
新版御書の全編拝読
ひらがな御書の解説
他宗教
視覚障がい書籍紹介
盲導犬
読者の皆さまへ
創価の森の小さな家
創価の森通信フリーダム
<別館>のご案内
座談会御書
勤行 唱題
体験談
創価学会歌
管理人より
聖教新聞
大白蓮華
グラフSGI
日蓮大聖人
牧口常三郎先生
戸田城聖先生
池田大作先生
池田先生の詩
一般書籍のご案内
学会書籍のご案内
ポエム
幹部指導
健康づくり
怪我・病気対策
健康ジョギング
障害者スポーツ
創価学会の記念日
創価学会総本部
公明党
仏法用語
御書の登場人物
新人間革命読書感想文
創価ニュース
政治
紛争・災害ニュース
九州大震災
希望の哲学
つぶやき
雑記帳
創価学会批判
創価学会の問題
夢修行
料理は魔法
大工は魔法
良死の準備
宮田幸一氏問題
サカマキガイ駆除
任用試験
日本・世界遺産見学
フェイクニュース
私の仕事
日顕宗
沖縄の戦争
公明党候補一覧
他宗教
経済
俳句
学会員として生きる
功徳を得る信心
フルマラソン
介護士への道2020
介護士への道2021
介護士への道2022
親孝行
ミニマリスト
窓際族以降の17年
地域の灯台たれ
ぼっちキャンプ
折伏教典の研究
ウクレレ愛好家
新版御書の拝読
21世紀の戦争
愛別離苦
ボランティア芸人
未分類

最新のコメント

公開でコメントくださった..
by sokanomori3 at 19:07
非公開さん、ご指摘ありが..
by sokanomori3 at 06:15
非公開さん、おはようござ..
by sokanomori3 at 06:12
非公開さん、ご相談内容が..
by sokanomori3 at 21:28
尚、私が戦うと考える根本..
by sokanomori3 at 07:35
非公開2さん、おはようご..
by sokanomori3 at 07:21
千早さん、おはようござい..
by sokanomori3 at 07:10
非公開さん、おはようござ..
by sokanomori3 at 06:53
非公開2さんのコメントの..
by sokanomori3 at 17:21
現実の世の中に生きている..
by 千早 at 07:31
もう一つ追記します。 ..
by sokanomori3 at 05:00
追記します。 小松..
by sokanomori3 at 04:54
まささん、おはようござい..
by sokanomori3 at 04:44
非公開さん、おはようござ..
by sokanomori3 at 04:35
学会は断固戦争反対のはず..
by まさ at 00:11
kaisenさん、こんば..
by sokanomori3 at 19:04
記事を読んでいて私も..
by kaisen at 18:32
gutさん、こんばんわ。..
by sokanomori3 at 21:26
菊川さんのウクレレが、聞..
by gut at 15:11
いつもさん、非公開1さん..
by sokanomori3 at 04:58

リンク

ランキング登録をしています。バーナーのクリック協力をお願いします!

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 創価学会へ



PVアクセスランキング にほんブログ村

ひらがな御書ホームページ

以前の記事

2023年 11月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月

ブログジャンル

ボランティア
介護