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ひとたびはポプラに臥す 5


☆標高5000メートルの国境.

以下に、ポプラに臥す5巻の表紙写真(砂漠の映像付き)を添付します。
ひとたびはポプラに臥す 5_b0312424_1653453.jpg

前回のポプラに臥す4の感想文は、→ここをクリック!
宮本輝(みやもとてる)は、中国から国境線を渡り、パキスタンに入ります。
この道は、鳩摩羅什(くまらじゅう)が、ガンダーラに留学するために通過した道です。
道は、平坦で安穏とした道ではありません。
パミール高原と6000メートル級のカラコラム山脈の隙間を抜ける険難の道です。
羅什が、この道を平然と渡ったはずはありません。

○越境.


一行(いっこう)は、ついに中国の最南端に到着し、国境を越りました。
恐ろしい山脈の谷間を抜け、標高5000mの高地を越えて、パキスタンに‥
中国には仏教の痕跡は皆無でした。
では、パキスタンにあるのでしょうか?
あくまで今の姿しかなく、仏教の湖は枯れ果てているのではないでしょうか。
そのイスラムの国に、ガンダーラと呼ばれた国がありました。
しかし、今はガンダーラという地名はありません。
1巻から2巻、3巻と読み進めるうちに、仏教の輝かしい何かが発見されるに違いないと期待していた読者も、読み進めるうちに、そのことを期待しなくなることでしょう。
私は、その気持ちはなくなりました。
けれど虚無の中に見えてくるものがおぼろげながらあるのです。

○長い旅路.


遥かインドからシルクロードを渡った仏教‥
5000メートル級の山脈を乗り越え、灼熱の砂漠を踏破し、ありとあらゆる民族の国々を通過して、漢民族の国に仏典を渡した鳩摩羅什。
その道は、地獄もあり、餓鬼もあり、愚かの畜生あり、修羅、人、天もあり、あらゆる人々の境涯の海を渡った一艘の舟のように感じます。
生きる者、死ぬ者、生まれし者、老いる者、あらゆる人間と触れ合いながら、羅什は仏典の翻訳を果たしました。
その長い、長い旅路を表現するために、あえてシルクロードとは関係のない話を宮本輝はしているのだと思います。
ファーブルの昆虫記、様々な小説、詩、さらに政治や経済、著者の思い出‥
読者は、宮本輝の無数の話を聞きながら、壮大な旅を続けます。
その中に、ひときわ輝きに充ちた話がありました。「牛女」という童話です。
私の魂の栄養となった話です。ぜひ、見てください。(^^)
その牛女の話は、→ここをクリック!

○所感.

中国の西の果ては、ウイグル人ではなく、またパキスタン人でもない人たちが住んでいました。宮本輝は次のように語っています。
「小さな地球上で、あの人は、かくかくしかじかという民族、あの人は、このような民族と色分けすることが馬鹿らしく思えてくる。どんな民族の血が入っていようが、所詮人間であって、ゆっくりと胸襟を開いて、膝を交えて話し合えば、いつかは分かり合えるし、まだそうすべきなのだ」
「ポプラに臥す」には、数多くの写真が掲載されていますが、この5巻の中国国境を越えるときの写真は、魅力のあるものが多く見られました。
途方もなく大きな山と、広大な草地、逞しく生きるパミール高原の遊牧民たち‥
その雄大さは、日本では見ることのできない風景です。
さて、いよいよ次は、最終巻となります。1700年前に鳩摩羅什が学んだガンダーラで、宮本輝は何を見て、何を語るのでしょうか。
次の記事は、→ここをクリック!

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by sokanomori3 | 2015-03-20 06:50 | 一般書籍のご案内 | Comments(7)
Commented by 福島の壮年 at 2015-03-20 13:31 x
様々な困難を乗り越えて、「妙法蓮華経」など300巻もの
訳業を成し遂げた鳩摩羅什は、何を思い、何のために
その快挙を成し遂げ得たのか・・・。
非常に興味深いですね。

下記、参考サイトの内容で感慨深い部分を抽出しました。
()内の言葉は、私の編集。
<サイトURLは、私のHNに埋め込んであります。>

『東洋哲学研究所/鳩摩羅什の国際セミナーに代表が出席
/国際セミナー・展示会「鳩摩羅什―哲人そして予言者」』

「彼ら(インドと中国を往還した仏教の学僧)の記録は
インドでは失われたものの、中央アジアと中国の言語で
多数残存している」

「彼(鳩摩羅什)の訳業には『金剛経』『阿弥陀経』
『妙法蓮華経(法華経)』『維摩経』『八千頌般若経』、
また龍樹の『中論』など54の仏典・300巻がある」

「そして何より(鳩摩羅什の)仏の梵音声への敬虔さは、
世代を越えて認められてきた」

上記セミナーの各登壇者の論旨は、英語版にて
読むことができます。
参考サイト内に記載されていますので、
興味があり、且つ、英語に堪能な方は是非!
Commented by 千早 at 2015-03-20 23:21 x
途中で挫折してしまった私なので、菊川さんのあらすじ所感を楽しみにしています。
6巻のお話も楽しみです(^^)
気が向いたら続き読むかもです。
Commented at 2015-03-20 23:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sokanomori3 at 2015-03-21 07:16
福島の壮年さん、おはようございます。

>鳩摩羅什は、何を思い、何のためにその快挙を成し遂げ得たのか・・

一番知りたいことですね。
そのことを、宮本輝はどう受け止めるのか。
また、私自身、どう感じるのか。
私は、この小説の中で、宮本輝と一緒に旅をしている一人として、私なりの答えも見つかるのだと思っています。
残り1巻となってしまい、何だかもったいない。(^^)
このまま終えて、結論をあれこれ想像するのもいいかもと思ったり‥
でもそれは読者の方々に「何だよ!」と言われてしまいますね。(笑)
★菊川広幸
Commented by sokanomori3 at 2015-03-21 07:16
千早さん、おはようございます。
ついに最終巻になりました。
遥か中国の東から、西の果てまで旅しました。
長い旅ですけれど、パミール高原の横を横断していよいよガンダーラに行くのですが、旅の終わりが近づいてきて、少しさみしいです。^^
そのように読者を導く宮本輝はたいしたものですね。
★菊川広幸
Commented by sokanomori3 at 2015-03-21 07:17
非公開さん、それはスゴイ発見ですね。
私も見てみますね。
★菊川広幸
Commented by sokanomori3 at 2015-03-22 07:49
非公開さん、見ましたよ。
その通りでしょうね、運動も大事とのこと。
研究したいですね。
★菊川広幸


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